正社員(複業)フリーターの Blog

出世を目指すのとは違う、自由に働く努力。それが正社員(複業)フリーランス。

出世を目指すのとは違う、自由に働く努力。それが正社員(複業)フリーター。誰でも、もっともっと自由に働ける。外資系企業を中心に、自由な正社員を20代から実践中。40代後半になって、働き方、転職、サラリーマン ✖ 副業(複業)のアウトプットを始めたこの頃。 Twitter @ISehaooooo

【1社目】辞表を提出しても辞められない会社があった!

「会社が辞めさせてくれない。」
E課長は荒れた。
冬の玄界灘の如く荒れた。
E課長の心は連日大シケとなった。
シケた海には、一艘の小舟が頼りなく浮かんでいた。
大波に翻弄される木の葉のような小舟。
筆者が一生懸命漕いでいた。

E課長のご尊顔は三面怪人ダダ。
怒ると連獅子の鬘を被って、般若のお面を付けていた。
お囃子に乗って、舞台の幕が開く。
「イヤー!」の掛け声と共に、ポンポンポンと鼓が打たれる。
E課長はヒステリックな舞を見事に舞った。
筆者は長唄囃子連中の一員として、雛段に居並んで演奏していた。
小鼓の囃子方あたりの役割だったと思う。

それにしてもだ!
会社に辞表を提出して辞めることのできないとは!
一体全体どういうことだ!?
筆者は混乱した。
何度も己の耳を疑った。
会社は辞めたければ辞めればいい。
それだけだ!
辞表を提出すれば、民法上、最短2週間で退職できる。
酷いブラック企業で働いていても、自分の意志さえがあれば、企業と雇用契約を解約できる。
会社を辞めたところで、命に係わる問題でもない。
独裁国家から逃れるのなら、これは正に命懸け。
銃殺覚悟で国境を越える努力が必要だ。
「たかだか会社」を辞める話をしている。

「次に行くとこないから、辞められない。それが本当のところでしょう。」
と、筆者は考えた。
E課長に一種の甘えを感じた。
ボロクソ言っている会社に生活を依存するしかない現実。
責任感があるから、会社に残るのではない。
会社を良くしようと行動を取るのでもない。
ただ、会社と周囲に怒りまくっているだけ。
「私がいなければこの会社はダメなんです」的な勘違いもない。
この先、飯を喰っていくのが不安になっただけだ。
筆者はそう考えた。
E課長が大勢のつまらない人物になってしまった。

自力で無理なら誰かに連れ出してもらうしかない。
「私は結婚します!!!」
E課長は、仕事中に唐突な発言をするようになった。
結婚「したい」の願望ではなく、「する」と宣言していた。
一度ではなく、周りは幾度となくこの宣言を耳にした。
お年頃の女子社員の寿が続くと、 特に繰り返していた。
「え!!! お相手いるのですか?」と、非常に失礼ながら誰もが耳をそばだてた。
お相手を確かめようかと、社内が肝試しのようになった。
「谷川君、確かめてみてよ。」
「席が横なのだから、さり気なくお相手のこと聞いてみてよ」と、先輩女子社員によく揶揄われた。
「私に死ねと申されるのですか?」
筆者は真顔で返答し、白装束姿で秀吉に面会する伊達正宗の気分となった。

人生最後の瞬間。
「お相手リアルに存在するのですか?」と、三面怪人に訊いて果てたくない。
着物姿の高島礼子に膝枕されて終えるほうが、絶対いい!
比較対象にならないくらいいいぃぃぃぃぃ!
当時E課長はいいお年の頃。
お相手がエアーかリアルか、最後まで真相は闇の中だった。
何の脈絡もなく、幾度となく飛び出す「結婚します」宣言。
オフィスでの一服の清涼剤とはならず、オアシスにもならなかった。
E課長の精神安定剤であったことだけは、社内周知の事実だった。

暑い夏の昼下がり。
一直線に延びる舗装路。
じりじり焼けたアスファルト。
遠くに見える陽炎の水溜まり。
E課長は「逃げ水」を追いかけてた。
決して渇きを潤すことはできないのに、懸命に前に進んでいた。
E課長なりの国境を越えようと考えていたが、国境線は消えて見えなかった。
筆者は頭を上げ、熱く長い道の先に目をやった。
灼熱のアスファルトの先の逃げ水に、絶望的な働き方が映って見えた。
(つづく)

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