スキルと環境の2点で要件が整ったサラリーマンは、副業(複業)をしたほうがいい。
筆者はそう考えている。
ところで、企業側の副業人材を受け入れは進んでいるのだろうか。
企業の社員への副業の容認や解禁のニュースは、連日のように報道されている。
ところが、企業が副業人材を受け入れの好事例やサクセス・ストーリーは、それほど多く耳にしない。
副業ブームでも、企業側の需要がとても高いわけでもなさそうだ。
企業側の副業人材の受け入れが進んでいない理由を今回は考えてみたい。
1.副業人材の労務管理が面倒
企業の副業人材の受け入れが進まない最大の理由はここにあると考える。
労働基準法で本業と副業の労働時間は通算しなくてはならず、企業には副業人材の管理はめんどくさい。
また、副業人材への過重労働対策として、企業には安全配慮義務が生じる。
割増賃金の支払い義務は、本業でなく副業人材の受け入れ企業となってしまいそうだ。
副業するもしないも個人の自由なのだから、副業ぐらいリミッター外してやらしてくれよと個人的には思うのだが、働き方改革が花盛り。
副業人材は活用したいが、働かせ方によってはブラック企業の烙印を押されかねないので、二の足を踏む企業もあるだろう。
それならばと、厚生労働省に労働基準法を改正しようとする動きがある。
副業を推進するため、本業と副業の労働時間を通算する規定を削除しようとする案が浮上している。
こんどは、給与や残業代の削減で不本意ながら副業をする人材から、ブラックな働かせ方の容認だと声が上がりそうだ。
いずれにしても、企業には副業人材はめんどくさい存在なのだ。
2.副業人材に対する社内の感情バリア
企業の人事権を全て束ねているような気になっている人事労務がいると、外部の副業人材は鬱陶しく感じられてしまいそうだ。
例えば、人事労務の頭を通り越して、経営者や現場の主導で副業人材の受け入れをした場合、こういった感情論は起こりやすい。
副業人材の採用自体、社内的にそのプロセスにも気を使わなくてはならないようで、これまた面倒な話だ。
うまく採用に至っても、よそ者の副業人材に働きやすい環境を提供してくれない場合も考えられる。
ちなみに筆者は、副業先の企業で、筆者より10歳以上年齢の若い担当者(女性)から、「何もんだよお前!」と暴言を吐かれたことがある。
プロフェッショナルな副業人材に対する素人の正社員の感情がむき出しであった。
会社のカルチャーもあるだろうが、外部のプロフェッショナルを活用する土壌がない職場では社員の感情が邪魔をする。
3.副業人材でなければならない理由がない
結局のところ、企業に副業人材を活用する具体的なイメージがない。
「このポジションは副業人材でしょう!」
企業側が副業人材を是非ともと求める場面は多くはないようだ。
「これ正社員の仕事でないでしょ。契約か派遣で採用してよ」と、契約や派遣の採用イメージはすぐに浮かぶのに、副業人材にはそれがない。
中小ベンチャーともなれば、そう簡単には優秀な人材をフルタイムで採用することはできない。
独立したフリーランスを雇うと料金は高くついてしまう。
それならばと、ちょっと流行りに乗って副業人材を探ってみる。
プロフェッショナル意識が欠如した副業人材を採用してしまうと、コミットしないどころかサボる人間もいるようだ。
そもそも何で副業人材を採用するのかと改めて考えると、本当は正社員を採用したいのだと改めて気がつく。
フルコミットする正社員がファースト・チョイスで、副業人材は”仕方なく”採用している感は拭えない。
以上の3点から、副業人材の受け入れが企業側で進まない理由を考えてみた。
ところで、副業を容認した大企業の経営者のインタビューを拝見すると、筆者はいつも思うことがある。
「うちは優秀な社員を育ててきた。社外でも優秀な副業人材となって活躍して、副業先企業でも貢献してほしい。」
このような話が経営者からは出てこない。
「うちは副業を解禁した。終身雇用も維持できないし、退職金ももう多くは払えない。社外で頑張って補填してよ。」
こちらが本音ならば、副業人材送り先の企業は、社員の副業の内容も質も問う必要もない。
社外で通用しない人材ばかりを育ててきたのであれば、副業は社内キャリアの梯子を外す為だけの道具のように思えてしまう。