正社員フリーター × 複業のBLOG

出世を目指すのとは違う、自由に働く努力 それが正社員フリーター × 複業(副業)

拙著『積極的副業人材』 http://amazon.co.jp/dp/B08BNJP42X/ 出世を目指すのとは違う、自由に働く努力。それが正社員フリーター × 複業。誰でも、もっともっと自由に働ける。外資 × バックオフィスで自由な正社員を20代から実践。40代後半になって、働き方、転職、複業(副業)のアウトプットを始めたこの頃。働き方の流行には注意喚起もする。 Twitter @ISehaooooo

【1社目退職】喰う為にやりたい事などない20代だった!

26歳の失業者は再就職を目指すべく、いよいよ面接に向かった。
目指す米系日本法人のオフィスは新宿の外れにあり、閑静な一画にあった。
4階建てのビルの3階部分を借りていた。
1フロアー全体で40坪程度の小さなオフィスだった。
ビルの建物は半面がオーバル型のガラス張りで、デザインを重視したビルだった。
1階に洋服店があり、2階と4階はアパレル会社の事務所となっていた、
外資とはいえ、工業用の計測機器を取り扱う会社には、ちょっと場違いな建物だった。

当日、筆者は約束した面接時間よりもだいぶ早く到着してしまった。
オフィスはここかと確認し、ビルを見上げた。
少し周りを歩いて、時間を潰すことにした。
冬のよく晴れた午後だった。
筆者は歩きながら少し考えた。
この不況に面接に呼ばれたので、せっかくのチャンスは生かさなければいけない。
前向きになったり、そうでもない気持ちが別の所から湧いてきた。
「是非とも貴社で働かせてくれ」と強い気持ちがあったわけではなかった。
名刺大の求人広告しか手元になかったので、正直分からなかった。

20代で会社やりたいことがある人は、余裕がある人だと思う。
筆者の20代は飯を喰うのが精いっぱいで、「やりたいこと」を考える余裕などがなかった。
自分が喰っていく為に「できること」から始めて、「他の人よりできること」を偶然のように見つけ、それを一つずつ地味に集めていった。
両手いっぱい集まった時には、筆者は30代半ばを超えていた。
地味な道程だったが、筆者の20代はSNSがなく、幸運だったのかもしれない。
お蔭で、スーパー起業家や著名人のSNS上での発言に惑わされることはなかった。
スーパーマン達をSNSでフォローしているだけで「その気」になっている人は意外に多いが、人生何も変わっていない事に早く気がつくべきだ。
憧れるのは自由だが、弱者が強者の「なんとか力」の真似はできない。

さて、「他の人よりできること」は1社目で偶然1つ発見することができた。
それを当時の筆者の言葉に置き換えると、「他人は苦労しているのに自分は簡単にできてしまう」ことで、これから面接に挑む筆者の唯一の心の拠り所だった。
ただし説明が非常に難しかったので、筆者の唯一の心の拠り所は、筆者を弱気にさせる原因でもあった。
平日に無職で暇を潰している人間の話など、ただの虚言にすぎない。
やってみせて証明するしかなかったので、ともかく職を得るしかない。

ところで、面接はアポ時間のどのくらい前に企業を訪れるのがいいのだろうか。
5、6分前には訪問先の内線電話を鳴らすのが一番良さそうだ。
10分前だと早すぎるし、1、2分前では遅すぎる。
企業は候補者が現れるタイミングを案外よく観察していると思う。
また、面接当日までに事前チェックを兼ねて、訪問先のオフィスまで下見をするのもいいかもしれない。
面接会場までの交通、乗り換え、最寄り駅の出口、オフィスがあるビルのトイレやエレベーターを事前に確認しておくと、当日慌てることはなさそうだ。

さて面接時間が近づき、筆者はエレベーターでオフィスのある3階に上がり、入り口横のインターフォーンを押した。
面接依頼の電話をくれた女性が中から出てきた。
オフィスの唯一の会議室というか応接室に通されて、面接官を待った。
入口から応接室に歩くまでオフィス全体が丸見えで、男性が3名いるのを確認できた。
ゆったりしたスペースの使い方をしている。
それがオフィスの第一印象だった。

しばらくすると、男性2名が筆者の前に現れた。
ひとりは日本法人の責任者だった。
英語のタイトルはジェネラル・マネージャーで社長だ。
頭がやや薄い痩せた60歳前半の方で、「溝田です」と名乗った。
もう一人は、中肉中背の人がよさそうな35歳の営業課長だった。
「新谷です」と笑顔で名乗った。

筆者も挨拶を済ませ着席すると、新谷さんから耳を疑う発言が面接の冒頭飛び出した。
「応募者が多くてですね、求人を掲載してから1週間で100人を超えました。」
「不景気だからね。ま、うちは景気は関係ないけれどね。」
溝田社長が何気ない自社アピールをしながら、続けざまに口を開いた。
なんと!マジですか!?

100人超の応募に採用は1名ということは、競争率が100倍超ということだ。
筆者の人生の中でこれほど重い100という数字はあったのだろうか。
100といえば小銭の100円玉。
漢数字にすると百で、機動戦士Zガンダムのモビルスーツの百式か。
百足と書けばムカデのことで、子供の頃に刺されて痛かった記憶が蘇る。
新谷さんは予想外の応募者数に、顔が綻んでいた。
机の反対側に座る筆者は、現実はやはり厳しいものだと改めて覚悟をした。
そして面接は思わぬ方向に進んでいった。
(つづく)

f:id:sehaooooo:20190929004120j:plain