企業はトップがダメだとそこで働く多くの社員を不幸にしてしまう。
かつて、あまりにも分かりやすく社員を不幸にする外資日本法人の社長がいた。
その社長の名は矢ガモさんといった。
矢ガモ社長が巻き起こした悲劇と喜劇が交錯した企業の日常を通して、英雄たちの選択にはほど遠い出世術や処世術を数回に渡ってお届けしたい。
歴史上の英雄やカッコいい企業ドラマから学ぶより、“ダメだ、こりゃ!”的なサラリーマンの日常から反面教師的に学ぶほうがより実践的だ。
ダメだ、こりゃ!と愚痴り、そこで思考停止してはいけない。
筆者が知る限り最高峰の“トホホ”企業の社内事情であり、その“トホホ”さゆえに筆者自身は得るものが大きかった。
ありがとう、矢ガモさん。
さて、矢ガモ社長は気高そうな羽毛で全身を覆っていたが、背中に矢が突き刺さっていることにご自身が全く気がついていない、とても“痛い”人物であった。
虚栄心と出世欲に満ち溢れた人物で、“運よく”社長になったチャンスを決して離しまいと、水面下で必死に足を漕いでいた。
矢ガモ社長自身、自分に社員を惹きつけるだけの魅力がないことを理解していた。
肝心のトップとしての実力もご自身で不安だったので、自分なしに組織が動いてしまうことが次第に恐怖となっていた。
「あの人が社外から社長になれたのは、宝くじで3億円が当たったようなもの」と、社員の間からチラホラ聞かれるようになるまで、たいして時間はかからなかった。
「誰かに社長の地位を奪われてしまうのではないか?」
社長に就任して間もなくから、矢ガモ社長は疑心暗鬼となった。
大人が子供に「イジメはいけない」と教えるのは正しいことだ。
なぜなら、イジメられっ子が大人になり権力を持つと、屈折したイジメっ子に変身して組織や社会に迷惑をかけてしまうからだ。
矢ガモ社長を見るにつけ、そう思った。
後から巡り巡って自分のところに被害が及んだりするものである。
屈折したイジメられっ子を量産して世に送り出さないように気をつけましょう。
経営者として現場に向かって辣腕を振るう能力もなく、日本市場での成長時期に社長になったので勝手に売り上げは上がってしまう。
見事にわかりやすくお飾りのような存在になってしまい、矢ガモ社長は要するに暇だった。
そこで、眼につけたのが企業カルチャーだった。
その企業は、カリスマ創業者の精神を宗教のように大切にしていた。
その為、矢ガモ社長はその社内啓蒙活動に堂々と時間を費やすことができた。
「社員は家族のように大切」と「採算度外視で顧客のため」の企業カルチャーは、外部とくに採用活動ではウケがよかった。
ただ、矢ガモ社長のフィルターを通した企業カルチャーの内部講習となると、明らかに的が外れている場合があった。
それはいつしか社内で失笑の的となり、入社前とのギャップに悩んだ社員はモチベーションが低下した。
企業カルチャーを異常なまでに大切にする企業だったことは、矢ガモ社長には幸運だった。
まず、既に他界していたカリスマ創業者の威光を存分に利用できた。
つぎに、米国の片田舎で育まれた精神だったので、日本法人のトップとして日本人向けに翻訳する必要があると公言し、自分に都合よく解釈できたので、権力の維持に利用できた。
ほんとうに厚顔無恥な男だった。
とにかく、この矢ガモが高邁な創業者精神の具現者であるというアピールをしたかったのだ。
■ 矢ガモ社長の出世術:企業カルチャーは常に自分に都合よく解釈する。
(②につづく)
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