(②からの続き)
矢ガモ社長は社長である自分に酔っていた一方で、社長の地位が誰かに脅かされることに異常なまでに神経を尖らせた。
そして、彼にはさらなる野望があった。
日本法人の社長からアジアのトップに昇進することだった。
その出世競争のライバルとなるのが中国法人や韓国法人の社長だった。
自分が次のアジアのトップの候補者であると勘違いしたようで、中国法人や韓国法人のネガティブ・キャンペーンに熱を入れた。
その一方で、日本法人が企業カルチャーの理想を実現し、その理想郷を育み統治しているのが矢ガモであると海外にアピールすることにもご執心となった。
そこで矢ガモ社長は、海外本社の圧倒的なイエスマンになることに決めた。
自分の出世のためには、海外の上役たちの指示や意見を無条件で受け入れることが最短だと考えた。
余計なことを考える必要はないし、自分で決定しないので失敗もない。
ライバルとなる中国法人の成長に焦ってはいたが、国内市場を伸ばす戦略など分からなかったので、自分の意見は一切持たないほうが都合がよかった。
それに、人柄が優れた矢ガモが企業カルチャーの伝道師であると海外にアピールする以外には道は開けそうになかった。
海外の上役たちの指令を詔とし、“I got it ! (御意!)”で即時受け入れたので、海外からは当然ウケが良かった。
日本法人社内では、不満や反論めいた意見には「〇〇(外人上司の名前)がそう言っていってますから!」で全て一蹴した。
自分の決定ではないので説明責任は負わないと考えた。
最終目的は自分の出世なので、イエスマンの言動を恥じなく晒すことを厭わなかった。
■ 矢ガモ社長の出世術:自分の意見は持たない。
矢ガモ社長は、あまりにも「〇〇(海外の上役や上司の名前)がそう言ってますから」を連発しすぎて、社内がますます白けていることに気がついた。
社員から“操り人形”の烙印を押されているようで、プライドも許さなかった。
そこで、企業カルチャーを自分なりに解釈したと社内に発表した。
「我が社の企業カルチャーは、私が解釈するに“キャリア志向の排除”ということです!」
「つまり、自分のキャリアを犠牲にしてもこの素晴らしい会社に仕えることです!」
社員は困惑の色を隠さなかった。
「この会社の人は真面目ですから、時間のことなど忘れて深夜も週末も働き続け、顧客に貢献する人たちですからね!」と、なんと人事がこう応答してしまった。
なんだかブラック企業感が漂った。
その数日後、マネージャー会議の場で矢ガモ社長の本性がムキ出しとなった。
「“キャリア志向の排除”、つまりあなた達の人事は私が握っているということです」と発言し、会議を凍てつかせた。
私のことを小馬鹿にしているが、お前たちの未来は私次第なのだという宣戦布告だった。
また、自分を脅かす人は排除するとの脅しとも受け取れた。
企業カルチャーを錦の御旗とした矢ガモ社長の暴走がここにスタートした。
人を信用しないトップは、社内のどんな情報でも収集できる仕組み作りに夢中になった。
特に、社長の地位を脅かそうとするマネージャー、社長の自分を陰で馬鹿にしているマネージャーをあぶり出したかった。
そこで、マネージャー達の頭を飛び越えて、その部下たちと個別面談をすることに決めた。
一般社員との個別面談に社長が膨大な時間を費やすのだが、社長としての仕事は無いので暇で時間はあったし、被害妄想的な性格だったので社内の情報収集の手間を厭わなかった。
矢ガモ社長は、個別面談で社長室に呼び出した社員一人一人に、顔面神経痛気味の表情で眼を見開きこう話しかけた。
「あなたの上司の悪口や悪い噂、弱点を教えてください。あなたのことは悪いようには扱わないから。」
■ 矢ガモ社長の出世術:あらゆる社内情報を収集するために協力者を集う。
(④につづく)
freeterbutworkasafulltimeworker.hatenablog.com
freeterbutworkasafulltimeworker.hatenablog.com
freeterbutworkasafulltimeworker.hatenablog.com
freeterbutworkasafulltimeworker.hatenablog.com
freeterbutworkasafulltimeworker.hatenablog.com