(⑤からの続き)
「子供じみたチクリ文化に乗った人間が得する。」
「社長は創業者の精神を自分に都合よく解釈している。」
真摯に会社を良くしようとしている社員は意気消沈した。
矢ガモ社長の定義する“家族”の一員ならば、顧客の為のビジネスに興味がなくても、仕事ができず人格に難があっても問題とはならなかった。
社員には“キャリア志向の排除”を謳い、その一方で、自称エリートの自分にはキャリア志向が適用されるかのような、あからさま態度に社内はうんざりした。
御多分にもれず、優秀な人材は社外に活躍の場を求めた。
自分が社長になる前は2流会社だったと吹聴し、前社長がやった唯一のいいことは自分を社長にしたことだと、矢ガモ社長は自分自身に酔いしれた。
実に気持ちが悪い人物なのだが、これも自身の生き残り戦略のようであった。
自分より“立派”な人物が社内にいては、自分の地位と出世が危うくなるからだ。
■ 矢ガモ社長の出世術:あまりにもレベルの低いところを見せ、自分より有能な人材を骨抜きにする。
海外本社も矢ガモ社長に日本法人の舵取りを任せるのは不安があったようだ。
「日本法人No.2の経営幹部をずっと探していますよね」と、馴染みのヘッドハンターが教えてくれた。
前回までの矢ガモ社長の9つの出世術を振り返ってみると、スターリン、ヒットラー、毛沢東と同じような出世術を駆使していたのだ。
「友達になるのは絶対無理」と社員が囁いていたのが大きく頷けてしまう。
■ 企業カルチャーは常に自分に都合よく解釈する
■ 自分の小さな成果を強調する
■ 自分の知らない分野はたいした仕事ではないと周りに吹聴する
■ 自分の意見は持たない
■ あらゆる社内情報を収集するために協力者を集う
■ 人の弱みを握るための情報収集なら手段を選ばない
■ 嫉妬のもつ負のエネルギーを最大限に利用する
■ 自分で手は汚さない。悪口をばらまく者たちを利用する
■ 自分なしに組織が動かない状況を作る
やがて日本法人の売り上げは停滞し、“社員は家族”のカルチャーも虚しく退職者が相次いだ。
さらに対抗馬となるNo.2が入社し、矢ガモ社長の苛立ちと焦りは増幅した。
製品の不具合問題で営業が疲弊していた時期でも、矢ガモ社長は社員全員参加の“企業カルチャーを学ぶ時間”を開催し、社内の苛立ちは爆発寸前となった。
「この苦境に、社長としての打ち手が企業カルチャーの勉強会なのか?こんなことに時間を潰している暇はない」と、営業は吐き捨てた。
社長に就任して8年、矢ガモ社長がその地位を追われる日が突然やってきた。
海外から上司が緊急来日し、オフィスのある建物から追い出された。
別れの挨拶のメールすら社員に送信することができない慌ただしさだった。
自分の出世のライバルになりそうな人物へのパワハラが度を越えてしまい、業績不振もあっての電撃解任劇だった。
矢ガモ社長はなぜ、こうもしてまで出世をしたかったのだろうか。
矢ガモ社長の人物評は、お世辞にも尊敬すべき人格者のリーダーではなく、哀れな小物と酒の肴にされるのがやっとだ。
出世のためなら、忠犬のように何でもやった。
例えば、海外からの要人との宴席で、場を盛り上げるために、“オカマの物まね”の余興も進んでやった。
私生活では離婚を経験し、裏組織の“女帝”との親密な関係が原因と社内では噂された。
出世が矢ガモ社長の虚栄心を満たすものなのだろうが、その代償として、「葬式で参列する人がいなさそう」とまで評される人物になることが本望なのだろうか。
答えは矢ガモ社長にしか分からない。
川崎駅に向かう多摩川の鉄橋から、羽を休めている矢ガモ”元”社長を見つけることができたのなら、是非とも聞いてみたいところだ。
それにしても、8年もの長きに渡り社長の座に居られたのは、“裏組織”のような矢ガモ社長を支えた社員たちがいたからだ。
その人たちが会社を駄目にした責任を問われることはない。
恥知らずのくだらないサラリーマンには、責任を負う人生を与えられることはない。
ただただ、貧しい精神の持ち主なだけなのだ。
(おわり)
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