都心に雪が積もると思い出す。
20代から30代前半は交通の乱れなどお構いなしに一生懸命出勤していた。
お金がなく郊外に住んでいたので、午前中を通勤時間で潰してしまうこともあった。
それでも出勤をしていたのは、働くためにはオフィスに行くしか方法がなかったのだが、それ以上の意味がそこにはあったのだ。
大雪や台風といった悪天候による都心の交通マヒは、どんなことがあっても出勤しますという仕事のやる気と、会社に対してある種の忠誠心を示すことができる絶好の機会だったからだ。
本当にアホくさいものだった。
当時の筆者は本当にアホで何の武器も持ち合わせていなかったので、このような非常時(大した非常時ではないけれど)にしか、アピールをすることができなかった。
当時のどの上司たちは「若いうちは長く働かなきゃ駄目だ」とは言うものの、「成果を出せ」とは言わなかった。
そのようにハッパをかけた人たちは、今では50代後半か定年を迎えるころの60代になっているので、ご自身たちは成果の無いまま仕事人生を終えるのかもしれない。
成果よりも“長く働く姿勢”みたいなものに美しい時代はとっくの昔になってしまった。
当時筆者が25歳の時、社長に「お前帰るの早いな」と酒宴の席で絡まれた後に、このアホくさいアピールを思い立ったのかもしれない。
筆者は毎朝7時過ぎには出勤し、誰もいないオフィスで働くのが集中でき好きで、夜にダラダラ働きたくないので、さっさと帰宅していただけなのだ。
日本人の働き方の根っこは今でも大して違いはないのだから、20代は出勤アピールをしたほうがいい人もいるのではないかと思う。
コロナ禍ぐらいの世界規模の災いがないと、日本人の働き方は変わらないのは明らかだ。
成果を大して求められていないのなら、出勤アピールは楽で効果的だと思う。
筆者自身の出勤アピールは、昔の笑い話ともうなってしまった。
今は朝の美しい景色をゆっくりと眺められるようになった。