「会社を辞めたい」とか「もう辞めた」とか、4月入社の新卒がTwitterでこう呟くのはこの時期の恒例行事となっている。
筆者自身を振り返ってみると、当時は氷河期の始まりだったので、“正社員”の身分で社会に出ることだけを考えていた。
設立が3年ちょっとの自称ベンチャーに入社したのだが、そこで心底恐怖を味わったので、2年弱で退職した。
仕事の厳しさからの恐怖ではなく、少し未来の自分像を見透かすような会社の先輩たちの姿に戦慄をしたからだ。
そのひとりは取締役の肩書きを与えられ、それが嬉しいだけの専門卒の部長だった。
創業社長に安月給で牛馬のようにコキ使われ、社員には嫌われるようなことを平気でやっていた。
頭が弱かったので仕方がなかったが、30代後半の若さで人間こうも卑しくなるのかと憐れみすら感じさせる人物だった。
人生を豊かにする教養みたいなものが身に着いていなかった。
詰まるところは転職もできず、同じ人生を引き続き歩んでいくしかなさそうだった。
もうひとりは女課長で、「こんな会社!」といつも怒りに満ち溢れ、そのやり場のない怒りのエネルギーで部下に怒鳴り続けていた人だった。
当時はハラスメントの6文字が世間一般に広く認知されていなかったので、怒られる部下が一方的に悪いとされていた。
今よりも男性社会だったから、余計な苦労が身に着いてしまい、仕事の目標はどこかに捨ててしまったようだった。
私生活で結婚がとにかく目標の寂しい35歳だった。
まじかでこの人たちを目撃し、こうなっては人生自体が終わるとの恐怖から、筆者は行動したというより逃げた。
恐怖だけが怠け者の筆者をどこか別のところに連れていってくれた。
その場に立ち尽くしていてはダメなのだ。