転職慣れをしている人は、現時点で転職を全く考えていなくても、「いいところがあれば」のスタンスで転職エージェントから定期的に情報収集をしている。
転職慣れしていない人には、これがなかなかできない。
現社よりも「いいところ」がこの世の中には数多あることぐらいはぼんやりと理解しているのだが、自分にとって「いいところ」とは、詰まるところどんな職場であろうか明確に定義できていないので、素直に「いいところがあれば」と口にできない。
そのような人はいつまで経っても転職はしないもので、早くも30代半ばになる頃には、この令和の世に驚くべきことではあるが、「自分はこの会社にずっと居続けるのかな」ぐらいの密かな心持ちになってしまうものだろう。
50年前ぐらいの高度成長期のサラリーマンと基本的には同じ心境なのだ。
誰にも教えられないその心の奥底は、どこか後ろめたいようで、その心が時には悪戯をしてしまうようで、お金絡みの詐欺の加害者になったり被害者になったりと、世間を騒がせてしまう人物もいる。
「いいところ」を曖昧にしたままで一念発起して転職活動をし、オファーをもらっても、大袈裟にも家族会議を開いてしまい、嫁から「いいところ」のお墨付きを得ることができず、あえなく嫁ブロックによる辞退に追い込まれるのがオチだったりもする。
転職慣れしている人物には、転職は”たかが”転職な程度のものであって、それを家族会議にかけることはしないものだ。
「いいところ」で気持ちが迷走している人は、誰かに転職の背中を押してもらいたいのだ。
また、転職ができる人は、何処にも属していない自分の状態が好きだったりもする。
現在の自分の「いいところ」探しが自由にできる人ともいう。
転職できない人は半永久的なというか、終身雇用的なマインドで「いいところ」を考えてしまう。
サラリーマンにとっては、何処にも属していない自分の状態に一番近くなるのは週末なのだろうか。
それでも日曜日の午後になってしまうと、月曜日のスケジュールをチェックしてしまい、現社への帰属意識を取り戻してしまうだろうか。
日曜日の午後にそこを堪えて、何処にも属していない自分の状態を意識して、もうちょっと長い時間を過ごしてみればいいと思う。
そうすれば、少なくとも月曜日の転職エージェントのスカウトメールに思わず反応をしてしまい、木曜日に面談の予定を入れてしまったが、水曜日に思い直してキャンセルの連絡をするようなことはなくなるだろう。
転職は「いいところ」探してはなく、自分の心を「いいところ」に置くところから始まるのだ。
なぜならば、自分を転職市場の売り物と考えれば、いかに自分をいい状態の商品にしておくかを考えるからなのだ。