筆者のような多重転職者は、「元〇〇(企業名)」ですと過去に在籍した1社をピックアップするのは難しいというか、それ以前に「元〇〇」を名乗るような愛社精神がない。
政治家が1回選挙に当選してしまえば、その後は何度落選しようが元議員の肩書を得ることができる。
一度も当選を果たせず選挙に落ちまくっている人は“永遠の新人候補”ではあるが。
サラリーマンも一度企業に入社してしまえば、退職後も「元〇〇」を名乗ることができる。
その人の経歴の一部の切り取りなのだから、「元〇〇」は使えて当然の権利でもある。
「元GAFA」を名乗っていても、実はAmazonの倉庫作業者だったとしても、それはそれで許してあげよう。
ご本人にとっては必死なのだし、使えるものは使ったほうがいい。
話はそれるが、過去に筆者は倉庫作業者を採用する必要があり、Amazonの倉庫作業者数名を面接したことがあったが、皆さんその負け犬っぷりが酷かったのをよく覚えている。
そのうちの一人の若者には、「うちは採用しないけど、君の今後の為に」と面接の受け方まで指導してしまったこともあった。
そういえば、「元〇〇(大手企業)グループ」を名乗っていた人にもお会いしたことがあったが、所属していた企業単体の知名度はないので、有名親会社のグループ企業に所属していましたよと言いたかったのだろう。
なんとなく微笑ましかったし、〇〇グループ的なことを誇る田舎臭さも感じた。
現在所属している企業名だけでは“足らない”と考える人たちが、「元〇〇」を名乗るのが一番しっくりするようだ。
有名企業から無名ベンチャーに転身した人たちが使うのは納得できる。
しかし、この「元〇〇」は引きずり過ぎると、ご本人のキャリアの判断能力を曇らせてしまい、周りからは痛い人に見えてしまうので注意する必要はありそうだ。
ある程度長い期間在籍をした企業への愛社精神を断ち切ることができない人に、その傾向が強いように思う。
ご本人が非常に優秀な人であっても、これは起きている。
退職して5年以上も経っているのに、「我が社は」と飲みの席で始めてしまう中年男性を目撃して悲哀すら感じたことがあった。
冗談で現役社員のように語っているのかと思ったら、当のご本人は大真面目だった。
現役社員でもないのに企業にハマり続けている人たちほど手に負えないものはない。
ハマるのなら企業ではなく、仕事にハマったほうが絶対いい。
溺れるものは藁をも掴むというけれども、過去に在籍した企業名にすがるのはさすがに心もとない。
40歳を過ぎてから、「過去どこで何をしてきたのか」を多く語る人に未来は甘くはない。
現在の所属企業の看板をサーフボード代わり使えるのなら、波から波に乗っていけばいい。
その企業名のサーフボードが波の向こうに消えた時、掴むものが藁ではなく、自分の両足が溺れない場所にあることが大切だ。
自分の両足を引きずれる場所で「元〇〇」を引きずるのなら、溺死はしないだろう。