週末でも早朝に目が覚める。
仕事机には、色の違う3台のノートPCが無造作に置かれたままだった。
早く電源を入れろとせかされているようで耐えきれず、思わずベランダに出てしまった。
もう外は明るくなり、美しい空が広がっていた。
東の空は白くにじみ、天頂に向かって見事な青色のグラデーション。
南から西に体を動かせば、下限より細くなった月が眼に留まった。
己の残りの人生を月に重ねてしんみりしたところで、今ここにある仕事は片付かない。
日が昇るにつれ、月の光は頼りなくなり、一層寂しくなってしまう。
机に戻るとするか。
どのPCの電源を入れようか迷っていると、さきほどの空がまだ名残惜しい。
太陽、地球、月。
地球と月は太陽の光で輝く。
自ら輝くことはできない。
地上で日が沈み、太陽の光が届かない夜となれば、月は輝きを増す。
そして月は、太陽の光が反射した地球にも、ぼんやりと照らされている。
これを地球照という。
本業、副業(複業)、生活を、太陽、地球、月の関係になぞってみる。
ようやく、ノートPCの電源を入れる順番が確認できた。
それではコーヒーを飲むか。
お湯を沸かしているうちに、カレンダーを再確認してしまう。
大勢の人が休んでいる時こそ働くのだ!
そんな憎まれ口を叩いて、仕事に取り掛かる。
休んでいる人達の先を行くのだ!
これもカッコつけて言ってみたかっただけ。
筆者のように週末の早朝から働いている人間は少数派なのだろうか。
そんなことはあるまい。
テレビの向こう側の人は、働いているではないか。
お店だって開店してるし、鉄道もバスも動いている。
競馬場では馬も走っている。
世の中の誰かのお蔭で、平日のように週末も日常が廻っている。
なになに休日格差だと?
休日にまで平等を求め、それを格差と嘆く人がいるとは驚きだ。
休める職場に転職すればいいではないですか。
それで全て解決。
休日格差には、例の上級国民のような妬みや僻みにしか聞こえない。
そのような人達に近づくのは、自分の運が落ちそうなので私はやめておく。
この世の中、あらゆることに差がつくのが当たり前。
誰のせいでもない。
その現実を受け入れて、人は自分の力で前に進むだけなのだ。
地味な日々の努力は、薄く消えそうな光を集め、やがて地球照となり見えるだろう。
仕事をサボって、いつの間にかベランダに戻っていた。
この空だけは私のものだ。