ひと昔に比べ、今は40代でも50代でも容易に転職できる時代となった。
自慢ではないが筆者自身も40代で4回転職をし、50歳になったことを契機に50代の転職を1回した。
40代後半から50代になっても転職できる人材は、社内の「ご意見番」の地位を全く求めていない。
貴社の現在抱えている問題を、経験豊富な脳みそを使い、手と足を動かして解決してみせましょうという、なんてことはない至極真っ当な人材なのだ。
重ねた年齢や地位がその人の成長の邪魔をしなかったのだろうとよく分かる。
生涯現役を決めて長年勤めてきた企業から諸事情で転職したところで、ブランド力のある企業名とプロダクトがなければ何もできない中高年人材を、筆者はそれなりの人数眺めてきた。
その人材たちが陥る罠は、社内の「ご意見番」になろうとすることだ。
要は、過去の自分の栄光をちりばめて語り(どこまで本当かは誰にも分からない)、あれこれ表面を引っ掻いたような評論をして、成果の一つも何もコミットしないポジションを確保しようとしてしまうのだ。
JTC(伝統的な日本企業の略語)で個室持ちの役員の夢が破れた感のある50代男性が、転職先のオフィスのオープンスペースで、横を通りすがる社員に声をかけてはご意見番気取りをしている姿には悲哀しか感じなかった。
生涯現役はご意見番をすることではないと理解している中高年男性は、一体どれほどの人数存在しているのであろうか?
ご意見番ではなかなか定年までたどり着かないのではないかと思えばそうでもなく、再雇用制度を利用して60代になっても社内のご意見番を気取ってしまう紳士すらいるのだ。
彼らは年功序列制度の残像と、年上は敬う教育の恩恵を受けている。
しかし最もやってはいけないことは、企業によっては彼らに対外的な名誉だけの肩書きを与えていることだ。
再雇用されたご老体に、部長やマネージャー、アドバイザーなどの肩書きを与えていることで、彼らのご意見番役をバックアップしてしまい、社内で勢いづけてしまっている場合もある。
企業はご意見番気取りの中高年をそれなりの人数飼わなくてはいけない。
なんとも若手社員には受難な時代なのだ。