正社員フリーター × 複業のBLOG

出世を目指すのとは違う、自由に働く努力 それが正社員フリーター × 複業(副業)

拙著『積極的副業人材』 http://amazon.co.jp/dp/B08BNJP42X/ 出世を目指すのとは違う、自由に働く努力。それが正社員フリーター × 複業。誰でも、もっともっと自由に働ける。外資 × バックオフィスで自由な正社員を20代から実践。40代後半になって、働き方、転職、複業(副業)のアウトプットを始めたこの頃。働き方の流行には注意喚起もする。 Twitter @ISehaooooo

【1社目】オフィスでフランダースの犬をした!

E課長が般若の形相になって怒る。
筆者に怒る。
毎日怒る。
午前も午後も怒る。
それでも足りないので、もう1回おまけのように怒る。
お蔭様で、筆者は見事に1日3回は怒られた。
E課長のヒステリックな怒り声が大きく響いた。
狭いオフィスだったので、音響効果は抜群だった。
3ヶ月も続くと、もはや社内の風物詩。
E課長が連獅子の鬘をかぶり、般若面を付けると舞台の幕が上る。
1日3回の「It's Show Time!!」。
歌舞伎舞踊の連獅子は、親獅子が訓練のため子獅子を谷底へ突き落とす。
E課長の場合は、己のやり場のない怒りの発散の為であった。

一方で、筆者には殆どその怒りが響いていなかった。
ダメージは少なく、精神的な谷底感はなかった。
相変わらずの天真爛漫男であった。
「谷川さんは天真爛漫でいいですねぇ」と、課長に幾度も嫌味を言われた。
「ええ。いい両親にスクスク育てられましたので。」
一度こう返答したら、E課長のご尊顔は般若の面どころではなくなった。
「う!やばい!」と、筆者は生命の危機を感じた。
フランダースの犬のネロよろしく、「おいで、パトラッシュ!」と、純朴な小走りを決めて一目散に逃げた。
エアーパトラッシュは可哀そうに逃げ遅れ、般若に捕獲されてしまったのだろうか。
筆者はあの時以来、筆者のエアーパトラッシュを目撃していない。
恐ろしくて振り返って確かめる勇気がなかった。

FAXマシンの紙詰まりで怒られたように、理不尽なことでも筆者は何度も怒られた。
カラスの糞が落ちてきても、筆者のせいにされそうな勢いがあった。
ちょうどその頃、筆者の同期がカラスに糞を頭から落とされ、オフィスに逃げ込んだ。
当時の池袋西口はカラスの楽園だった 。
被害者がE課長でなくてよかった。
「貴方がカラスを仕込んで私の頭の上に糞を落とさせたのね!」
なんて怒られることを想像して、ちょっと面白かったけれども。

筆者に非がないことも、勘違いしてE課長は筆者を真っ先に怒った。
筆者は他の社員の避雷針となっていた。
筆者に非がないと後で気が付くと、E課長のバツの悪そうな仕草がちょっと可愛らしかった。
「お、課長もオンナだな」と一寸思った。
オフィスにゴキブリが出た時、「きゃ!」としたのを目撃した時は、「課長のブリっ子は気持ち悪い」と思った。
キャラ的に踏み殺すと思ったが。

E課長は本当によく怒った。
新たな宇宙を誕生させるビックバンの如く、怒りのエネルギーは凄まじかった。
突き詰めれば、御身の境遇が怒りの主な原因だった。

実は、E課長は入社半年で辞表を提出していた。
筆者が部下になって間もなくのことだった。
既に会社に愛想を尽かしていた。
「こんな会社!」とよく呟いていた。
あいにく、ここは選手層の薄い中小企業。
簡単には辞めさせてもらえなかった。
「後任を入社させるので、引き継いでから辞めるように。」
E課長は会社のお達しに真面目に従った。
会社は急遽経験者を入社させたが、その後任候補が1ヶ月持たずに退社してしまった。
「あなたが私の後任です!」と、E課長が必要以上のプレシャーをかけた結果だった。
そしてE課長はぷっつんした。
突然、地中海のマルタ島に旅行に行ってしまった。
「忙しいのに。オレは認めなかった」と、C部長はブツブツ言っていた。
1週間以上不在で、オフィスは静かで筆者は嬉しかった。

「会社が辞めさせてくれない」と、帰国後E課長は周囲に寂しく漏らし、再び怒りながら働いた。
「え!辞めることができない会社などあるの???」
「え!オレはやばい会社に在籍していないか???」
筆者はドン引きしてしまった。
「職業選択の自由ってありますよね」と。
筆者はE課長を可哀そうな人だと思い始めた。
あまりにもショッキングだったので、エアーパトラッシュの捜索をすっかり忘れてしまった。
池袋西口界隈の電柱に、「探し犬」の張り紙をし忘れた。
カラスだけは、「カー、カー」鳴いて、電柱の上から池袋の街に糞を落としていた。
(つづく)

 筆者のパトラッシュは何処に消えたのだろうか?

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