新型コロナ禍がなかったら、今ごろは東京オリンピックの開幕前で街は盛り上がっていたのだろうか。
五輪の延期など全く思いもよらぬことだったが、年初に描いていたシナリオとは全く別の話がどこも現在進行形なのは、とにかく驚愕なのだ。
「2020年は転職するぞ!」と、一年の計を立てていた人も、大幅な変更を迫られているに違いない。
転職には転職先があり、それは相手がいることなので、自分の計画だけではどうにもならないことなのだ。
企業と対等の立場を得るために、「いつでも転職できる人材になっておこう」といった呟きをTwitterでよく見かけはするが、この禍のような緊急時では実行性が乏しい。
積極的なキャリアの構築には、備えるというディフェンス面が強調されることは少ないが、今回のような緊急事態は定期的に勃発していることを忘れてはいけない。
また、転職は相手があることなので、いいキャリアには、いい出会いが必要となることも抑えておきたい。
また、いくら実力があると考えていても、次の転職先が見つかる前に間違っても退職をしてはいけないのも鉄則だ。
新型コロナ禍があろうが、禍がなかろうが、転職のやり方は変わらないはずだ。
ただ今は、ブラック企業に在籍して身体に支障を来しているようなことがなければ、転職には向いていない時と大多数は考えるだろう。
それでは、副業(複業)はどうであろうか。
コロナ禍があってもなくても、副業ブームの終焉は昨年後半には予想はできていた。
副業ブームといっても、副業やりたいブームだったような印象でもあった。
さらにこの禍となり、足元の本業がぐらついているのか、心理的にも本業への回帰は明らかで、静かにブームは終わりを迎えているようだ。
企業側も、どうしても副業(複業)人材でといった状況でもなく、非常時での事業の立て直しは、やはりフルタイムの正社員でというのが現実だ。
副業人材は、片手間感やハーフコミットのネガティブな印象に加え、切りやすい外注先と見なされているのだろう。
ブームとしての副業は終わったが、働き方の手持ちのカードの1枚として、副業カードを持つ人は増えていくだろう。
「テレワークできるよね」から「テレワークできたよね」と、テレワークを以前よりずっと多くの人が評価するようになったように、副業に対しても同じように認められていくと考えているからだ。
ただ、副業にも今はあいにくこの禍の最中なのだ。
いずれにしても、禍があろうが、禍がなかろうが、人は飯を喰っていくために働いて稼がなければいけない。
先日、ジョージ・クルーニー主演の映画『マイレージ、マイライフ(Up in the Air)』を見ていたら、どきっとした台詞が飛び出してきた。
How much did they first pay you to give up on your dreams?
禍があろうが、禍がなかろうが、喰うために人はどこかで夢を諦めてしまう生き物なのか。
この禍を、自分に格好がつく、都合のいい言い訳にはしたくないと考えている。